右は文書より抜粋
やまけんさん。山形ではね、『肉そば』っていうものがあるんですよぉ。キンキンに冷やした鶏のダシに冷たい蕎麦を入れて、鶏肉を甘辛く煮たのをのせるんです。最高ですよ!。『ふ〜ん、そりゃつまり鶏南蛮の冷たいやつだろう? とたかをくくっていたのだ』がしかし、これが大間違いであった。大体、その話を聞いた時、周りにいた人たちもみんなウンウンと頷きながら『肉そばはねぇ〜旨いよ!』としきりに言っていたのだ。かくして夜は山形一寸亭での宴会となり冷酒を飲みながら
『やまけんさん 〆は肉そばですよ、実はこの店は肉そばの旨い店なんです!』そして運ばれてきたドンブリを見て僕は考えを新たにしたのだ。予想していたようなギトギトしたものではなく、ほとんど脂の浮いていないダシが張られていた。一口すすってみると、鰹だしをベースにした通常のそばつゆとは全く違う、濃厚にしてキレのいいコクが感じられる!これはどうやら『鶏の親鶏しか使っていない、鶏スープです』とのことだ。この絶品鶏スープがキンキンに冷えたところがミソである。しかも、上にのっている鶏肉を甘辛く煮た具がまた旨い。だしがら状態になっているかと思いきや、ちゃんと煮あげた鶏肉である。『う、旨いじゃないですかぁ〜』と声をかけるが、みな、一心不乱に肉そばをすすり込んでいる。いや、これはビックリするほどに旨い!『山形ではこれを冬でもキンキンに冷やしてこたつの中で食べるんですよぉ』なるほど!確かにこれは冬に食べるのも旨そうである!山形一寸亭の肉そば、実に絶品であった。この一寸亭は、山形ではとてもメジャーな店である。地元の人が集うだけあって非常に王道といえる味だった。

4×4 MAGAZINE 2006掲載